平成29年度 兵庫県芸術文化協会 ふるさと文化賞を受賞
今回の取材は、ご自宅に訪問させていただき、綺麗に整理されている資料を見ながら楽しい時間を過ごさせていただきました。
昭和36年4月に農業科に入学されました。高校時代の思い出は農業当番で、ひよこを卵から大きくしたり、
豚を育てて、卒業式に全校生徒に豚汁を作ってごちそうしたそうです。お世話になった先生は、新任で若い兄貴分のような西浦先生、草刈りで出てきたマムシをさばくなど、ダイナミックな藤江先生、稲穂の生体を身体でまねて教えてもらった飯田先生と、非常に個性あふれる特徴的な楽しい先生方の逸話を聞くことができました。修学旅行では、フェリーで別府まで行き、そこから宮崎、鹿児島と南九州の名所をバスで巡り、バスガイドさんとも仲良くなったりしたのが、楽しかったそうです。
卒業後は、日本国有鉄道(国鉄)に入社され、さまざまな役職を経てから、天王寺団旅支店長に着任し、併せて指定管理職に昇進、更に上位昇格を果たされました。国鉄~JRには、平成13年までの45年の長きに渡りお勤めになりました。
また、前さんは地元の貴志で、区長、農会長、JA兵庫六甲総代などを歴任され、現在は三田市農業委員会でご活躍です。そして地域文化、伝統活動でも三田市指定無形文化財 貴志田楽保存会代表、貴志音頭保存会代表、国重文、貴志御霊神社氏子総代及び、本殿檜皮葺き屋根改修兼正遷宮祭実行委員長、菩提寺である慶安寺檀徒総代及び本堂建替え推進委員会顧問、令和6年4月からは、貴志長生会(老人会)の会長と数々の重要な役職を経験されております。そして、兵庫県芸術文化協会の平成29年度ふるさと文化賞も受賞されました。この賞は、貴志御霊神社秋祭りの伝統芸能である貴志田楽の保存会を立ち上げ、後継者の指導に尽力され、地域の伝統芸能の保存継承に取り組み地域文化の向上につくされた功績を称えた素晴らしい賞です。
また、すずかけ台小学校の生徒たちが、校区学習で御霊神社を訪れた際には、神社まで出向いて子どもたちに、地域に伝わる歴史や文化として神社の参拝の仕方や本殿の説明、三田に伝わる「夜泣き石」の民話を丁寧に教えておられます。今回の取材でも、ご自宅から御霊神社まで移動して、国の重要文化財に指定されている本殿はもちろん、灯籠や参道などまで細かく解説していだだきました。柔らかな口調で大変わかりやすかったです。
最後にご趣味をお聞きすると、「長年国鉄に勤めていましたので、夫婦で旅行に行くことです。」笑顔でお答えいただきました。
また、御霊神社は新聞にもよく取り上げられており、参拝者も年々多くなってきております。一歩その敷地内に入ると、今までの景色とは一新し、まるで有名な大きな神社のような広く長い参道に目を奪われます。
雰囲気も素晴らく、空気も澄んでとても荘厳な感じで心が洗われました。正月の初詣ではニュータウンからも多く来られ、こだわりの美味しい甘酒の振る舞いもあり、屋台も出てにぎやかなので、毎年来られる方も多く長蛇の列になるほどの人気の神社です。貴志御霊神社に一度訪れてみてはいかがでしょうか。その年は、きっと良い一年になると思います。
※ 三田の民話 「夜泣き石」 三田市教育委員会 「みんわまっぷ」より
九鬼のお殿様は、貴志の御霊神社にある「茶臼石」が気に入り、家臣に命じてお城の庭石にした。
しかし夜になると、女のすすり泣くような声で、「貴志へ帰りたい。貴志へ帰りたい。」という声が聞こえてくるようになった。
気味悪くなった殿様は、その石をきれいに清めて、元の場所へ返させたところ、すすり泣きは聞こえてなくなったという。
そのことから、茶臼石のことを「夜泣き石」と呼ぶようになったそうだ。
( 執筆 谷口 真弥 )