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山下 かつ子さん(有高15回)

 氷上の土地に嫁いで39年、還暦も過ぎ少し立ち止まり、振り返ってみるのもいいのではないかと思うこの頃です。
私は、主人と一緒に、金属加工・建築資材製造業の建国産業(株)を営んでおります。会社といっても、小規模企業ですが。
今から18年前の平成2年、従来の事業に加え、新規事業に取り掛かりました。
新規事業を検討するに当たり、スケールメリットがある仕事、市場調査、地の利、製造設備、材料の仕入先、販売先など毎晩家族で話し合いました。
勿論、それには資金面のことも伴います。融資を受けなければならず、あらゆる方面に問い合わせたところ、兵庫県の設備近代化資金にたどり着きました。県の審査は厳しかったのですが、何とか承認を頂き融資を受けることができました。5年間という短期間ではありましたが、無利子での融資はとても有難く思いました。
機械を発注して6ヶ月後の納入と決まりましたが、その間、同業他社からの色々な中傷も聞いたりして、また期待もありましたが、不安も伴い、迷い、悩む日々でした。
ある夜中、主人が布団の上に正座して、「かつ子、機械の発注したけど明日断ってくる」と苦しい胸の内を話しました。私は、「技術面のお父さんが、そう思うんやったら仕方ないわ」と答え、夜の明けるのを待ち、主人は先方に出向きました。
その夜、また家族で話し合い、主人と私の心配事の「売れるやろか」「投資額も大きいし」との不安な思いを告げると、当時89歳の母が
「蓑、一杯でも売れたら、そこから売れるんやないか」
また、当時中学1年生の次男が
「そんなん、やってみなわからへんよ。売れるように努力したらええやん」
など励まされたり、笑ったり。でも、笑った事で気持ちを取り戻し、決断する事ができました。
それからは、機械が来るのが待ち遠しく、本格的に準備に取り掛かりました。
9月に真新しい機械が納入されてくると、今までの心配が嘘のように思え、更なる気力が漲りました。
新規事業は、お蔭様で生産・販売共に順調でした。
効率生産の発案は基より、自社機械の修理をしていた主人が更なる生産工場を目指し、持ち前の器用さを発揮して、アイデアと工夫と根気で全自動の反転装置を開発し、一層の量産体制が確立できました。
機械の話題を聞きつけ、とある商社の方が来社され、この自社開発設備を見て一言「建国さん。この機械設備は売れますよ。私が販売します」とのこと。私は「うちは、機械屋じゃないのでね……。社長が戻りましたら話してみます」
その夜、主人に話すと、「よし造るぞ」と、思わぬ副産物が生まれました。
鉄鋼新聞などの業界紙にも掲載されました。
JIS取得のために、私も品質管理責任者の資格を取得し、社員さんと力をあわせJIS表示許可工場を取得するに至りました。
現在は、子供ら(長男夫婦と次男)が、(財)日本建築センターの評定を取得したり、新JISも取得と経営全般に頑張っています。私どもは少々時間が出来ましたので、地域の役員や、事業に少しずつ参加させて頂いています。
企業は生き物です。いつも危機意識を持ち、又全ての皆様に感謝し、いろいろな体験を積み重ねてほしいと願っています。

(文責:山下かつ子)

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