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出合 利一さん(有高10回)

平成17年度より清陵会新理事に就任された出合利一さんに原稿を寄せて戴きました。
私が有馬高校に入学した年は創立60周年であったと思う。当時の兵庫県知事・阪本勝氏のあいさつ「端緒の一粒の麦がこの有高の地に落とされて早60年……」の言葉は、私の脳裏に今もはっきり焼きついている。
そして30年後、90周年を私は育友会長として迎えさせていただいた。清陵会館の竣工もこの年である。極めて厳粛に行われた記念式典。その中で生徒達の行動・態度は素晴らしく、日頃辛口で知られた地方紙にも絶賛されたことも、嬉しい思い出である。

かつて、若妻会の「健康講座」で講師にお迎えした同志社大学の西岡一先生がおっしゃった、
1.食べ物は本来、農業・漁業を基盤とする大自然の中から生まれるものである。
2.京都には「三里四方のものを食べるのが身体のために一番良い」という諺がある。
に非常な感銘をうけた。
その後、農村活性化講演会で「身土不二」という言葉を教わったが、その意味は、字の通り「人間の身体と土(自然)は2つにあらず、1つのものである。だから、生活する土地・環境の中で育ったあるいは生産された食べ物が身体のために一番良いということだ。京都の「三里四方……」と同じ意味である。

これらの考えが、その後の私のJA人生における基本となった。農業の国際化が進む中、これからの三田の農業はこれしかない……という信念ともなった。

平成4年、営農部長となった時に策定した『営農振興3ケ年計画』の巻頭に「JAさんだは《三里四方》そして身土不二の精神に基づき、三田で生産されたものを三田の消費者に。市民の健康を守るため三田の農業を守りたい。」と掲げた。その実践の1つが、学校給食の地元食材利用であり、平成11年6月の農協市場舘《パスカルさんだ》開設であった。
今でこそ”地産地消運動”がもてはやされているが、全国的にも先んじてこの運動に精力を注いできたことが私の誇りでもある。

平成16年6月、43年間のJA生活にピリオドを打ち、私は新規就農者となった。
伝統ある有馬高校農業科を卒業して44年目の今、一生産者としてパスカル三田に通う今日この頃である。

(出合 利一)