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石田 安夫さん (有高6回)

絵筆片手に50有余年

現会長(西浦道雄)より「ワシの同級生で素晴らしい画家が三木におるんや」と聞き、調べてみると、何と、私の自宅から川を挟んだ前の地区出身で、北谷小学校では4年先輩の方です。早速電話して取材を申し込み、吉川町の山田錦の館でお目にかかることになりました。学生時代以来ですから、50数年ぶりの出会い、お互い顔が分かるかなと心配していましたが、約束の時間が来ると、何となく昔の面影を感じる人物と名乗り合い、無事再会できて、お話を伺うことができました。

本校では農業科で、2、3年生では今は亡き常深先生が担任。男子ばっかりだったので、お互いざっくばらんに、よく意見を交わすまとまったクラスだったそうです。

農業当番で朝早く登校し、豚や鶏の餌やり、温室の水やりをしたこと。体育祭では三高寮歌(京大出身の東浦先生のご指導)を歌って、「時代の変遷」をテーマに仮装行列をしたこと。文化祭では各クラスから選出されたメンバーで「つづみの里」の劇を、宝塚歌劇団から衣装を借りてきて演じたこと。毎週の生徒集会では、アトラクションとして東浦先生お得意のスチールギターに、アコーディオン、バイオリン等で加わり、ハワイアンの曲を演奏したことなど、懐かしく話して下さいました。

卒業後は、兵庫農科大学短大農学科に進学。下宿の近くに教育実習校であった加古川中部中学校の美術の先生が住まわれており、絵を描くのが好きだったことから教えを受け、余暇を利用しては描いて、全国学生油絵コンクールや東光会展に出品されました。

昭和33年に吉川中学の教員(美術)となり、志染中学の校長で39年間の教師生活を終えられました。その間、教育者としては勿論、画家、郷土民俗研究家、農園芸家など多彩な顔を持ち、各方面で活躍されてきました。特に画家として、「路傍」「北国」「能楽」「回帰」の油彩画シリーズ、「ふるさと三木」「三木の町並み」の水彩画シリーズ等、数多くのシリーズを手がけられ、民俗的風物への関心、人間味漂う心情を表現されてきました。また、毎年、中央展、光風会展、日展及び各地方面に出品され、数々の素晴らしい賞を受賞されてきました。

退職後は、市立堀光美術館館長として9年間勤められ、訪れる人が少なかった美術館を改革・改善され、市民に親しまれ愛される美術館に変貌し、多くの人が来館されるようになったそうです。その他にも、三木市観光振興懇話会役員、三木市文化会館運営評議員座長、フリューゲル混声合唱団団長、三木第九合唱団運営委員を務める傍ら、自宅でもサロン・アートエナジー水彩画教室を開かれており、多忙な毎日を送られています。

これまでの功績をたたえて数々の賞を受賞されていますが、近年では、平成18年に堀光美術館に作品を12点寄贈されたことから19年に紺綬褒章を受章、さらには、郷土史や文化財の研究に努める等地域文化の向上に尽くしてこられたことを評価され、21年11月26日には、県知事から「ともしびの賞」を受賞されたと、喜ばれていました。

 現在は、24歳の時に結婚された奥さんとの二人暮らしですが、神戸市で生活されている長男と長女にあわせて5人のお孫さんがおられ、たまに集まって賑やかに過ごすのが楽しみだそうです。

(文責:谷郷賢明)
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